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「施工例コンテスト2022」結果発表

 

 

2018年に始めた「IMAGAWA施工例コンテスト」は今年で5回目となり、大変多くの方々にご応募頂きました。

コンテストを思いつくきっかけは「ハウスメーカーの家づくりが日本の気候や風土や文化にあったものなのか、高気密・高断熱など性能をメインに謳って、新建材で構成された家が日本の住宅の当たり前になっていいだろうか?」という懸念からでした。

日本各地には自然と共棲しながら暮らすための家づくりを実直におこなっている工務店や大工さんがいます。この方々の建てられる住宅こそ日本に相応しく、当たり前になってほしい。そのためには住まいづくりを考えている方から高い評価を受けることが重要です。ベンチマーク事例がその一助となるのではないか、雰囲気や室礼を判りやすく提案することが役立つのではないかと考えて始めた次第です。

本年度は審査委員長として建築家の丸谷博男先生をお迎えしました。審査は一次で候補作品を選出し、二次で最優秀賞3点、優秀賞5点を決定というスケジュールで行いました。なお審査に当たっては厳正を期するために、応募者名を伏せておこなっています。ご応募いただいた方に厚く御礼申し上げるとともに、本コンテストが日本の住まいづくりの質の向上に役立つことを願っております。

株式会社イマガワ 代表取締役 赤松洋一

 

 

丸谷博男 先生

 

イマガワの建具を使った住宅や非住宅の事例コンペということで、設計者や工務店の皆様からたくさんの応募をいただきました。

建具のデザインそのものと、空間における室礼、そこには基本的な作法があります。その作法のあり方を、応募作品から学ぶことができます。その中には、昔からよく知っていること、知らなかったこと、新しく気づくこと、驚かされるような建築空間との一体感、相乗効果、などなどです。

今回は、これからのことも考え、住宅部門、店舗部門、施設部門というように建築の機能的な違いを配慮して部門分けをさせていただきました。今後さらに、建築と建具のあり方を探求し、日本の建築空間から一段と深く饒舌な作品が多く生み出されることを期待していきたいと思います。

また、現場での取り組みの中で、「もっとこんな建具があるといいなあ」「こんな時にしか使えない特殊なものだけど、こんなものもあるよね」そのような課題を遠慮なく私どもにぶつけていただけると大変ありがたいです。

日本の建具、その素晴らしい世界をさらに発展させていきましょう。

 

<最優秀賞> 

息吹木の家株式会社(岡山県)S様邸(ホームページ

 

写真は、メインの空間LDKです。正面のポリカーボネート板の引き戸は、玄関ホールからの建具です。実はその玄関にも土間の広がる趣のある空間構成があります。大切な二つの空間をつなぐ役割が建具です。それぞれの空間の物語は裏腹の関係にあり、どちらも裏ではなく表なのです。その繋ぎ方にさまざまな物語を込めてこの建具があるのです。そのような意味で、建具の選択とデザインは最も重要な空間の肝となるものです。 LDKの右側の全面障子も大きな迫力と共に、和紙を通した光の柔らかさがあります。これも建具の効力です。この住宅では、あらためて、建具の力への理解を深めることができました

 

<優秀賞> 

株式会社吉住工務店(兵庫県)Y様邸(ホームページ

檜板の床と杉の天井に挟まれた空間に、木質の家具と建具がバランスよく配置され、大変構成力のある住宅です。キッチンも設備機器の印象を最小限にして木質の空間に調和させています。また、白壁の吹き抜けを通しての大きな広がり、自然光の拡散、それぞれが木質とのバランスのなかで一体的な空間を構成しています。設計者の力量を感じます。

 

<優秀賞> 

富田製材株式会社(岐阜県)S様邸(ホームページ

 

この住宅は、杉板源平の引き違い戸や引き戸を垂れ壁なしで、床から天井面まで長尺で使っているところに特徴があります。その表現は、空間がシンプルになると同時に、モダンな感覚を生み出します。一方では、ヒューマンスケールが失われ、何か圧迫感のある、部屋が狭く感じられるという欠点を生み出すことが往々にあります。ところがこの住宅では、そのような感覚になりません。その秘密は、ヒューマンスケールを生み出す、椅子や家具があり、この写真の左側にあるように、欄間の空いた間仕切りがあって、高低の変化を作っている点です。大切な設計作法を学べます。

 

<優秀賞> 

野積建設株式会社(群馬県)K様邸(ホームページ

たった一枚の写真の応募でしたが、床座の空間の良さが感じられる魅力的な佇まいでした。ポリカーボネート板の半透明建具が、モダンさを醸し出している事も、格子が立ち並び陰影を作り出している壁も、そして障子をさらに付け加えている点も、「和沢山」と言える贅沢な空間です。

 

<最優秀賞> 

株式会社吉住工務店(兵庫県)K様店舗(ホームページ

この店舗には、カウンター席だけではなく、テーブル席もあり、その配置がとても気持ちの良い店舗空間となっています。木質の奏でる響きが店舗全体に渡っているのです。そして、設計者の心使いが隅々に感じられ、お客さまは大変居心地の良い時間と空間を過ごせると思います。このような空間がまちまちに点在したらさぞ素晴らしい街と感じられることでしょう。もちろん、職人の仕事への心使いも伝わってきます。

 

<最優秀賞> 

有限会社吉田建築計画事務所(茨城県)M保育園(ホームページ

建物全体は大きな教室の連なるフリースクールのような施設となっています。中廊下は湾曲して魅力的な空間です。その中にあっても、この写真にある空間は、白い壁と木質と煉瓦タイルの組み合わせが、北欧の感覚を醸し出しています。北欧というよりアルヴァ・アアルト的なtasteです。日本人が、近代的な感覚として最も受け入れやすく落ち着く空間だと思います。その魅力がここにあるのです。建築計画的にはまだまだ物語がありそうですが、設計者のお話を伺わない限りなかなか読み解けません。でも素晴らしい空間です。

 

<優秀賞> 

佐野建築設計室(千葉県)K学園(ホームページ

この建築の面白さは、建物全体が弓のように湾曲しながら、各教室はトラス梁の連続した特徴的な空間となっています。その点も高く評価できるのですが、それ以上に印象的だったことは、杉板建具の赤白の源平の特徴を生かした、空間としていることでした。それにより、木のナチュラルな存在よりは縦縞のモダンな印象を作り上げているのです。その扱いに感服させられました。見事です。

 

<優秀賞> 

株式会社和田デザイン事務所(岡山県)D保育園(ホームページ

空間というより、杉板の独特の表情とその周囲に作り出す雰囲気、それを最もよく理解し愛している感じが伝わってきます。保育における幼児と杉との触れ合いを十分に感じることができます。目で見て感じる、手で触って感じる、足で踏んで感じる、五感と保育空間とが一体となって感性に触れ合っていることがよく理解できます。

 

 

 

2022.08.20